個人事業主として活動していると、「税務調査に入られたらどうしよう」と不安に思う方も多いでしょう。
実際、税務署は毎年多くの個人事業主を対象に調査を行っており、申告内容に誤りや漏れが見つかれば「追徴課税」という形で追加の税金が課されます。
本記事では、国税庁の公表データや実務経験をもとに、税務調査の実態とそれが資産に与える影響を、具体的な数字を交えてわかりやすく解説します。

目次
① 個人事業主に税務調査が入った場合の平均追徴税額
国税庁が公表している「所得税及び消費税調査等の状況」(令和4事務年度)によると、
個人事業主に対する実地調査件数は 約5万4千件。
そのうち、何らかの申告漏れが見つかった割合(非違割合)は 約86% に上ります。
つまり、調査が入れば9割近くが何らかの指摘を受けているというのが実情です。
さらに、1件あたりの追徴税額(本税+加算税)は平均で
- 所得税:約 219万円
- 消費税:約 132万円
両方を合わせると平均 約351万円 に達します。
もちろん規模や業種によって差がありますが、一般的な個人事業主でも 100万〜300万円前後の追加納税 が発生するケースが多いのが現実です。特に、税務調査は過去3年(悪質な場合は最大7年)を遡って行われます。
たとえ1年あたりの誤差が数十万円でも、3年分の積み重ねで合計200万〜300万円の追徴課税になることも珍しくありません。

② 追徴課税には加算税と延滞税が発生する
税務調査で過少申告が見つかると、
追加で納める「本税(不足していた税金)」のほかに、加算税と延滞税が課されます。
加算税とは?
| 種類 | 内容 | 税率 |
| 過少申告加算税 | 申告が少なかった場合 | 原則10%(50万円超部分は15%) |
| 無申告加算税 | 申告自体をしていなかった場合 | 原則15%(50万円超部分は20%) |
| 重加算税 | 故意に隠した・改ざんした場合 | 35〜40% |
たとえば、過少申告分が200万円だった場合、加算税(10%)で 20万円、
重加算税(35%)なら 70万円 の追徴になります。
延滞税とは?
延滞税は「納付の遅れ」に対して課される利息のような税です。
納期限の翌日から発生し、税務調査で発覚した場合でも当初の納期限にさかのぼって計算されます。
令和6年現在の延滞税率は以下の通りです。
| 期間 | 税率 |
| 納期限の翌日から2か月以内 | 2.4% |
| 2か月を超える期間 | 8.9% |
仮に200万円の不足分が1年後に判明した場合、延滞税はおよそ 15万円前後。
つまり、本税200万円+加算税20万円+延滞税15万円=計235万円が追加負担となります。

筆者の経験上、自分で確定申告している人の約95%の個人事業主が間違っている
筆者(税理士)として数百件の税務調査に立ち会ってきましたが、
自分で確定申告している個人事業主の約95%に何らかの誤りがあります。
代表的なミスは次の通りです。
1.経費の過大・過少計上
領収書の漏れや、私的支出を経費にしてしまうケース。
特にスマホ・車・自宅兼事務所などの支出は要注意です。
2.家事按分の誤り
光熱費や通信費を「半分くらい経費」としているなど、根拠のない按分が多いです。
3.売上漏れ
複数の口座やキャッシュレス決済を使っており、売上の一部が申告漏れになるケース。
税務署はマイナンバー・銀行情報・SNS投稿などもチェックしており、簡単には隠せません。
つまり、悪意がなくても結果的に過少申告となっていることが多く、
それが追徴課税の原因になっています。

④ 結局は専門家に任せた方が得をする
「税理士に頼むのは高い」と思う方もいますが、
税務調査を受けた場合の損失と比べれば圧倒的に安い保険料です。
仮に税理士報酬が年間15万円だったとしても、
税務調査で200万円の追徴を受けた場合、結果的に185万円の損失差。
さらに、税理士が関与していると次のようなメリットがあります。
- 帳簿・証拠類が整備されており、税務署からの信頼度が高い
- 不明点を即時に説明できるため、調査が短期間で終了
- 自主修正扱いとなり、加算税が軽減または免除されることもある
このように、専門家に任せることでリスクと負担を同時に軽減できるのです。

専門家に任せた場合と自己申告の場合の資産に及ぼす影響
以下は、3年間分の税務調査を受けた場合のシミュレーションです。
| 区分 | 自己申告 | 税理士に依頼(3年分) |
| 税理士報酬 | 0円 | 45万円(15万円×3年) |
| 誤りによる追徴課税 | 200万円 | 0円(正確な申告) |
| 延滞税・加算税 | 30万円 | 0円 |
| 合計支出 | 230万円 | 45万円 |
| 結果的な差額 | ▲185万円 | ー |
つまり、税理士に3年間依頼しても総支出は45万円程度。
自分でやって誤りが見つかれば230万円の追徴になる可能性があるため、
結果的に185万円の資産を守ることができます。
また、税理士に依頼することで、節税対策や青色申告特別控除(最大65万円)も漏れなく活用でき、
長期的には数十万円〜数百万円単位で資産増加効果が期待できます。さらに、自分の資産状況を客観的に把握したい方は、
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資産偏差値の考え方を知ることで、税金対策だけでなく「将来どれだけ資産を増やせるか」の目安を持つことができます。

まとめ
- 税務調査が入れば約9割が何らかの指摘を受けている
- 平均追徴額は200〜350万円前後(加算税含む・延滞税別)
- 自己申告者の約95%が誤りあり
- 専門家に依頼すれば加算税・延滞税リスクをゼロに近づけられる
- 3年分の報酬45万円で、数百万円の資産を守る効果がある
- 資産形成を考えるなら、税金×資産管理の両輪で考えることが重要
税務調査は「悪意ある人」だけに来るものではなく、
多くは「知識不足による小さなミス」が原因です。
税務署はAI・マイナンバー・金融情報を通じて年々データ精度を高めており、
今後は“知らなかった”では通用しない時代になっています。
確実に資産を守りたいなら、
「税金の専門家=税理士」を味方につけること、
そして「資産全体を見渡す視点」を持つことが、
最も賢い選択と言えるでしょう。





